モノは、試しで。
日常に、「新しい」が増えていく。

- 2020.09.18
- 14:01
夏をはじめる、一本のアクセサリー。
この世で一番幸せな匂いは?と聞かれたら、迷わず「焼きたてのパンの匂い」と答える。
そんな幸せな匂い、パンの匂いに囲まれたら、私の仕事始めの合図。
今日はどんなお客さんがくるかな。丸の内のランチタイムが始まる前に、ひと休み。
ー そういえばね、この前話したサングラス届いたんだ!
「一目惚れしたって言ってたやつ? 見たい見たい!」
胸ポケットから取り出した新しいサングラスは、自分の出番を知っているかのように、勢いよく初夏の光をすくう。
「サングラスっていうより、アクセサリーみたいだね」
ー でしょ? 堅苦しいのが嫌で今までサングラスは買えなかったんだけど、これは色がやわらかいし、モノは試しでって思ったの!
何気なくInstagramを眺めていたら、目に飛びこんできたのがこのサングラス。
フレームとレンズの珍しい色合いが気に入って、すぐに買ってしまった。
「あ、カフェラテさん来てるよ」
ー ほんとだ! 私先に戻るね!
カフェラテさんは、ほぼ毎日うちのサンドイッチを買いに来てくれるお客さんで、凛とした姿勢と、聞いているこちらの背筋まで正してくれるような声の持ち主。
いつもカフェラテを一緒に頼むことから、お店のメンバーでこっそりそう呼んでいる。
ー いらっしゃいませ!
「こんにちは。もしかして、さっき裏でメガネを見てた? 」
ー わ! 見られていたんですね…。新しいサングラスで、うれしくてつい…。
「お似合いでしたよ。私も最近メガネを買ったの。最近急に夏らしくなってきたし、サングラスも欲しくなってきちゃったわ!」
ここで働く前は、ビジネス街である丸の内のことを近寄りがたい街だと思っていた。
それが気付けばこうして声を掛けてくれる人がたくさんいる街になっていた。
新しく出会う人、いつも顔を出してくれる人、遠くから手を振ってくれる人…
幸福な食卓、とまではいかなくても、皆に幸福なランチを、今年の夏も。
すてきが広がる、つながる。
カレーって、市販のルウを使わなくても意外と簡単にできるらしい。 しかもそれが、ルーを使うより何倍もおいしいと聞いたら、それはもう試してみるしかない。 材料は揃えた。 あとはレシピ通り、いつも通り、手際よく進めれば大丈夫。 この間までタブレットの文字になかなかピントが合わなくて、なんとなく流れの悪さを感じていた。 3歳年上のママ友に話してみたら、それは老眼の症状だと言われた。 もうそんな歳になったんだ、と少し暗くなったけどそれも束の間。 「私も使っているんだけど、すごく便利なの。よかったら」 このかわいいローネットを後日プレゼントされて、気分がパッと明るくなった。 「これで少し楽になったらいいな」 最初はその程度の期待感だったけど、 今ではこれなしじゃ料理の味も変わってしまうんじゃないかと思うほど。 必要なときにスッとかざすだけで、 おいしいのためのタイミングを逃がさず、味を決める大事なひとさじを忘れずにすむ。 私の 「ほんのちょっと」 を助けてくれる。 スパイスの香りがキッチンを漂う。 うん、やっぱりルウを使うときとは全然違う。 今度みんなに会ったら話してみよう。 「最近どう?」と必ず聞かれるから。 カレーを一から作ったこと。素敵なリーディンググラスを使っていること。 「モノは、試しで。」
- 2020.09.18
- 14:01
週末をまちわびて。
日曜日は一週間のなかで一番いい日にしたい。 仕事好きな性分だからこそ、日曜日は自分の心と向き合うことに尽くす。 好きな場所へ行く。好きな詩集を読む。好きな人と過ごす。 結局一日が終わるころには無意識に仕事のことを考えてしまうけど、 いい日になればなるほど、仕事が楽しみになる。 今日もそんな日になるだろうか。 実は、少し気がかりなことがある。 先週の木曜日、夕方。 「修正で指摘しましたけど、商品名の最初は『パ』じゃなくて『バ』ですよ」 完成した誌面を見た取材先からの電話で青ざめた。 まさか私がそんなミスするなんて… 慌てて修正原稿を読み返したけど、それでもなかなか区別がつかない。 確かに最近「読みにくいな」と思っていたけど... そっか、これは文字の問題ではなく、私の目の問題なのか。 「老眼」の二文字が頭の中にはっきり浮かんだ。 思い出したらまた不安になってきた。 リーディンググラス、買おうかな。 でもせっかく揃えたアクセサリーや小物の空気を壊すようなものは持ちたくない。 眼鏡は元から好きなアイテムだからこそ、こだわりだってある。 この週末は、思い切ってリーディンググラス探しに費やそう。 「モノは、試しで。」 探しに探してようやく出会えた。 初めて知ったブランドだけど、まるでずっと前から探していたような気持ち。 だけど一目惚れのような、体温があがる感覚。 素敵なものに出会えたときはいつもそうだ。 色、形、質感。 添えられた遊び心は、隠されているようで、見つけてほしさも感じる。 「いいものに、ぴったりな言葉を乗せて届けたい」 そう思って始めた仕事だった。 長く、できるだけ長く続けたい。 部屋にほんのりオレンジ色の光が広がる。 日曜日が終わろうとしている。 そしてまた、私は週末を待ちわびる。
- 2020.09.18
- 14:02
贈り物のきっかけ


- 2020.10.07
- 11:14